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书名:柠檬(日文版)pdf/doc/txt格式电子书下载
推荐语:
作者:(日)梶井基次郎著
出版社:华东理工大学出版社
出版时间:2018-05-23
书籍编号:30415867
ISBN:9787893902727
正文语种:日语
字数:7541
版次:1
所属分类:中外名著-外国名著
版权信息
书名:柠檬(日文版)
作者:(日)梶井基次郎
ISBN:9787893902727
版权所有 · 侵权必究
えたいの知しれない不ふ吉きつな塊かたまりが私わたしの心こころを始し終じゅう圧おさえつけていた。焦しょう躁そうと言いおうか、嫌けん悪おと言いおうか――酒さけを飲のんだあとに宿ふつか酔よいがあるように、酒さけを毎まい日にち飲のんでいると宿ふつか酔よいに相そう当とうした時じ期きがやって来くる。それが来きたのだ。これはちょっといけなかった。結けっ果かした肺はい尖せんカタルや神しん経けい衰すい弱じゃくがいけないのではない。また背せを焼やくような借しゃっ金きんなどがいけないのではない。いけないのはその不ふ吉きつな塊かたまりだ。以い前ぜん私わたしを喜よろこばせたどんな美うつくしい音おん楽がくも、どんな美うつくしい詩しの一ひと節ふしも辛しん抱ぼうがならなくなった。蓄ちく音おん器きを聴きかせてもらいにわざわざ出でかけて行いっても、最さい初しょの二に三さん小しょう節せつで不ふ意いに立たち上あがってしまいたくなる。何なにかが私わたしを居堪いたたまらずさせるのだ。それで始し終じゅう私わたしは街まちから街まちを浮ふ浪ろうし続つづけていた。
何故なぜだかその頃ころ私わたしは見みすぼらしくて美うつくしいものに強つよくひきつけられたのを覚おぼえている。風ふう景けいにしても壊こわれかかった街まちだとか、その街まちにしてもよそよそしい表おもて通どおりよりもどこか親したしみのある、汚きたない洗せん濯たく物ものが干ほしてあったりがらくたが転ころがしてあったりむさくるしい部へ屋やが覗のぞいていたりする裏うら通どおりが好すきであった。雨あめや風かぜが蝕むしばんでやがて土つちに帰かえってしまう、と言いったような趣おもむきのある街まちで、土ど塀べいが崩くずれていたり家いえ並なみが傾かたむきかかっていたり――勢いきおいのいいのは植しょく物ぶつだけで、時ときとするとびっくりさせるような向日葵ひまわりがあったりカンナが咲さいていたりする。
時ときどき私わたしはそんな路みちを歩あるきながら、ふと、そこが京きょう都とではなくて京きょう都とから何なん百びゃく里りも離はなれた仙せん台だいとか長なが崎さきとか――そのような市しへ今いま自じ分ぶんが来きているのだ――という錯さっ覚かくを起おこそうと努つとめる。私わたしは、できることなら京きょう都とから逃にげ出だして誰だれ一ひと人り知しらないような市しへ行いってしまいたかった。第だい一いちに安あん静せい。がらんとした旅りょ館かんの一いっ室しつ。清しょう浄じょうな蒲ふ団とん。匂においのいい蚊帳かやと糊のりのよくきいた浴衣ゆかた。そこで一いち月がつほど何なにも思おもわず横よこになりたい。希ねがわくはここがいつの間まにかその市しになっているのだったら。――錯さっ覚かくがようやく成せい功こうしはじめると私わたしはそれからそれへ想そう像ぞうの絵具えのぐを塗ぬりつけてゆく。なんのことはない、私わたしの錯さっ覚かくと壊こわれかかった街まちとの二に重じゅう写うつしである。そして私わたしはその中なかに現げん実じつの私わたし自じ身しんを見み失うしなうのを楽たのしんだ。
私わたしはまたあの花はな火びというやつが好すきになった。花はな火びそのものは第だい二に段だんとして、あの安やすっぽい絵具えのぐで赤あかや紫むらさきや黄きや青あおや、さまざまの縞しま模も様ようを持もった花はな火びの束たば、中なか山やま寺でらの星ほし下くだり、花はな合かっ戦せん、枯かれすすき。それから鼠ねずみ花はな火びというのは一ひと
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